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より良い社会のために行動できる生徒の育成を目指す「SDGs宣言」
~日本の学校教育でのSDGsに対する取り組み事例~

お知らせ
2023.01.25

日本の教育現場では今、SDGsに関する取り組みを行う学校が増えています。
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。2015年の国連サミットで採択され、2030年までに達成することを目指して掲げられました。「持続可能でよりよい世界」の実現に向け、環境問題・経済成長・人権・紛争・教育など、21世紀の世界が抱える課題を解決するための17の目標が定められています。
ここでは、学校において特に先進的なSDGsへの取り組みを行っている事例を紹介します。

広島県にある武田中学校・高等学校は、創立50周年となる2018年に、SDGs達成に向けた活動の実践校となることを宣言しました。建学当初から目指してきた「世界的視野に立つ国際人の育成」は、SDGsが目指す「誰も置き去りにしない持続可能な世界の構築」と一致するとして、様々な取り組みを行っています。

学校生活を通じて、自然にSDGsに触れる

この学校で行われている「横断型授業」では、食の問題、気候変動、ジェンダーと多様性、フェアトレードなどのテーマを4~5の教科を横断して学び、1つの問題が様々な分野(教科)に関わっていることに気づけるようになっています。複数の教科の学習を通じて1つのテーマについて考え、授業の後には感想を書いてタブレット上でアルバムにするといったことを行っています。こうした授業を通じて、学校の教科と現実社会の問題とのつながりを感じたり、テーマについて問題意識を持ったりすることに加え、1つの問題を多面的に捉える力が身につくことを目指しています。

1つのテーマについて複数の教科を通じて学ぶ「横断型授業」

授業だけではなく委員会でも「1委員会1SDGs!」を合言葉に、SDGsの観点から活動を見直したり、新たな活動ができないかを探ったりしています。受験を終えた高校3年生から参考書を譲り受け、新年度の受験生に譲る(代議員会)、ペットボトルのキャップの回収を行い、エコキャップ運動を行っている団体に届ける(生活委員会)、SDGsに関する本をアイコンとともに展示し、紹介ポスターを作成する(図書委員会)、などといった取り組みが行われています。

図書室ではSDGsに関する本をアイコンとともに展示
図書室ではSDGsに関する本をアイコンとともに展示

それら以外にも、学校生活のあらゆる場面でSDGsに触れる機会が設けられています。遊びながら学べるSDGsボードゲームやSDGsカードゲームを体験して、SDGsの内容や実現の難しさについて学んだり、保護者とも協力して子供服を回収し、某大手アパレル企業のプロジェクトに参加したり、文化祭では模擬店や展示を行う団体ごとに「私たちのSDGs宣言」を考え、関連するSDGsのゴールのアイコンを掲示したりしました。プラスチック製の容器に替えて木製のスプーン・コップを使用する(硬式野球部)、男子部員の活躍も見てもらい、男性にも興味を持ってもらう(茶華道部)、展示に使用した段ボールを資源としてリサイクルする(高校2年のクラス)など、さまざまな生徒の決意が表れていました。

SDGsカードゲームを体験して、遊びながらSDGsを学ぶ
文化祭で団体ごとに提示される「私たちのSDGs宣言」

全国でも珍しい「SDGs研究会」を創設

2020年には全国でも珍しい「SDGs研究会」が立ち上げられ、2022年現在では中高合わせて25名の生徒が所属し、SDGsに関する研究や取り組みの実践を行っています。
子供向けに作成した「SDGsカルタ」は、イラストやデザイン、文章も全て部員によるオリジナルです。それぞれの札にはSDGsのゴールが関連付けられていて、楽しみながらSDGsがわかるように工夫されています。中学校見学会では、訪れた児童が研究会のメンバーと一緒にこのカルタを体験しました。

回収した雑用紙から作られた「ECO NOTE BOOK」

またプリントなどの雑用紙を回収して綴じ、表紙を付けて「ECO NOTE BOOK」として生まれ変わらせる「紙貯金プロジェクト」の活動も継続的に実施しています。作られたノートは、生徒がいつでも自由に取れるよう配布されていますが、試験前にはすぐに無くなってしまうほどの人気です。その他、研究会の活動を紹介する動画を制作してインターネットで配信するなど、多岐にわたる活動を行っています。

「第1回全国高校生SDGs選手権」で総合優勝

SDGs研究会は、2021年に行われた「第1回全国高校生SDGs選手権2020」に出場し、見事総合優勝に輝きました。この大会は、全国12の高校と企業12社がタッグを組み、高校生から企業へ提案されたプロジェクトの内容を競ったものです。

武田高等学校のプロジェクトのテーマは「平和の多様性」です。「身の回りの小さな幸せや平和に気づける人が、世界中に増える」ことを目指して企画し、地元のプロバスケットボールチーム「広島ドラゴンフライズ」に提案を行いました。具体的な提案内容については「あなたのピースで 世界がピースに」と銘打ち、思いやりの連鎖を表現する動画の制作、つながりを示すバッジを作り、試合会場ほかで配布、平和の象徴である折り鶴を作るブースを試合会場に用意するなどです。さらに、折り鶴に平和へのメッセージを書いてSNSで拡散する「折り鶴リレー」も提案しました。この企画は実際に広島ドラゴンフライズで採用され、チームや競技の垣根を越えて広がりを見せました。

「全国高校生SDGs選手権2020」で総合優勝に輝いたSDGs研究会のメンバー

「ピース」という言葉に「平和」と「パズルの一片」の意味を込め、一人ひとりの想いを世界に広げていくというこの企画は高く評価され、総合優勝につながりました。審査員からは、「(原子爆弾の被爆地である)広島ならではの平和をテーマにした取り組みに意味がある。高校生の声には力があり、その訴えが世界に届くことに価値がある」と評されました。

今後の継続的な活動に向けて

武田中学校・高等学校がSDGs宣言を行ってから4年が経ち、「SDGsを知る」からスタートしたその学びは、「SDGsでつながる」、「SDGsを深める」、さらには「SDGsを広げる」と深化しています。今ではSDGsが共通語・共通の物差しになっていると感じられるほどになり、生徒が広めることで家庭でもSDGsにつながる取り組みをしている、という声も多くあがるようになりました。
これまで、様々な新しい取り組みを、まずは実践してみるという姿勢で行ってきた武田中学校・高等学校。今後はこれまでの活動を精査し、さらに継続していきたい、としています。