人気上昇中の四国エリア×大手旅行会社のプランでSDGsを学ぶ
~日本で広がる「サステナブル教育」の取り組み事例~
近年、持続可能性を意味する「サステナビリティ」や、その目標達成のための指針である「SDGs」といった言葉を耳にすることが増えていますが、教育の現場においても「サステナブル教育」への注目が高まっています。
サステナブル教育はESD(Education for Sustainable Development)と呼ばれ、「持続可能な開発のための教育」を意味します。特に子どもたちにとっては自分ごと化せざるを得ないテーマであり、日本においても、その推進のための動きが徐々に増えてきました。
ここでは、教育旅行にも組み込むことができるサステナブル教育プログラムの事例を紹介します。
お遍路をルーツとする「お接待」の文化が息づく四国は、深山幽谷の祖谷渓をはじめ豊かな自然に恵まれ、「瀬戸内国際芸術祭」などのアートイベントでも人気のエリアです。世界的な旅行メディア『Lonely Planet(ロンリープラネット)』では2022年に訪れるべき旅行先の地域部門で6位に選出されており、魅力ある旅行先として国内外から注目が集まっています。
一方で、四国も他の地域と同様に、人口減少や高齢化の加速、大規模自然災害の発生などが、伝統文化や自然環境の継承に大きな障壁となっています。多くの自治体や企業が持続的な地域づくりを目指すなか、自治体・企業・旅行会社が連携して教育旅行を造成する取り組みが行われています。
四国の知られざる魅力を掘り起こし、若い世代が旅行を楽しみながら学ぶことで、その魅力を永続的に残したい――SDGs達成に向けて企画された2つのプログラム、愛媛県新居浜市の別子銅山見学プランと徳島県上勝町のゼロ・ウェイスト宣言を素材とする学びのプランを紹介します。
プログラム①:銅山見学とSDGsセミナーを通して環境問題解決の歴史を学ぶ
愛媛県新居浜市で2022年から実施されているのが、学生団体限定の「住友グループSDGsセミナー&別子銅山見学プラン」です。
日本三大銅山に数えられる別子銅山は、江戸時代初期より採掘が始まり、明治時代以降は急速な近代化を達成して、地元のみならず日本の経済発展に貢献しました。同時に発生した煙害問題へ対策を講じ、植林事業を進めるなど、当時の“持続可能な取り組み”は地元でも評価されています。
別子銅山は1973年に閉山しましたが、開山から一貫して住友グループが運営してきたため、貴重な史料も散逸することなく残され、観光坑道や記念館が整備されています。
「住友グループSDGsセミナー&別子銅山見学プラン」では、観光坑道の「マイントピア別子」をボランティアガイドとともに見学した後、住友グループの社員によるSDGsセミナーを聴講します。所要2時間ほどのコンパクトなツアーながら、巨大模型や映像で再現された坑道を歩き、企業が環境問題に取り組んできた歴史を知ることは、学生にとって持続可能な社会のあり方を考える貴重な機会になるでしょう。
プログラム②:「ゼロ・ウェイスト宣言」で話題の町で、SDGsへの考えを深める機会を提供
徳島県上勝町は2003年、自治体として日本で初めて「ゼロ・ウェイスト(ごみ排出ゼロ)宣言」を行いました。
上勝町にはごみ収集のサービスがありません。生ごみは各家庭で堆肥化し、その他のごみはリサイクル可能な資源として住民各自が「ゴミステーション」に持ち込みます。資源ごみはリサイクルの仕方などによって45種類以上に分別され、上勝町のごみリサイクル率は80%を超えています。
ゴミステーションがある「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」には、ラーニングセンター&交流ホール、着られなくなった子供服などの不要品が並ぶ「くるくるショップ」などが設けられています。また、建具などの廃材を活用して建てられた宿泊体験施設「HOTEL WHY」も併設されており、ゼロ・ウェイストの発信基地として世界中から多くの視察者が訪れています。
上勝町の持続可能な取り組みを学べるのが「SDGs未来都市で学ぶ 限界集落から持続可能な町へ」プランで、上勝町、起業家育成と地方創生に取り組む一般社団法人、大手旅行会社の三者連携で始動しています。
プランは3種類あり、いずれもゼロ・ウェイストセンターへの訪問が中心です。ごみの焼却、埋め立て量の削減、リサイクル率の向上に取り組んできた経緯を、ボードを使っての解説や映像で学びます。住民のプライバシーに配慮して分別エリアには立ち入れませんが、それも住民主体の取り組みを象徴する一面といえるでしょう。
また、「旅マエ」「旅アト」と称する事前・事後学習も特長です。起業家育成と地方創生に関わる一般社団法人の専任講師を中心に、SDGs達成へ向けて活動する先進地域の人たちとオンラインで話したり、上勝町での学びをまとめて意見交換したり、学生が旅行で得た知見をもとに考えを深める機会が提供されています。
限界集落の“持続可能な地域づくり”から学べること
四国の自治体や企業が行ってきた持続可能な地域づくりの取り組みのなかでも、高齢者が活躍する成功例として有名なのが上勝町の「葉っぱビジネス」です。料亭などで料理に彩りを添える「つまもの」の葉っぱ(葉わさびやもみじなど)を、山や畑で育てて出荷する事業で、1986年に始まりました。標高700m以上の山間にある上勝町は過疎化と高齢化が進む自治体ですが、葉っぱビジネスで年商1,000万円を稼ぐお年寄りもいると話題になり、映画化もされています。
上述のプログラムでも、プランの種類によっては、この葉っぱビジネスの視察のほか、町の中心部にある月ヶ谷温泉のエコホテルの見学、ゼロ・ウェイストセンターでのワークショップ、まちづくりの担い手へのインタビューなど、参加者が住民と交流できる場も用意されています。
限界集落でありながら高齢者がいきいきと働き、住民一人ひとりがごみを出さない社会を目指し、廃材も優れたデザインでリユースする上勝町から、いまの時代を生き抜くヒントをもらえるに違いありません。
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