訪日教育旅行と学校交流の受け入れについて

訪日教育旅行と付随する学校交流の受け入れは、交流を行う学校と支援を行う各自治体との連携が必要不可欠です。

近年、日本全国の自治体で訪日教育旅行受け入れ拡大のため、学校同士のマッチングや学校交流の実施をサポートするための体制整備が進んでいます。観光庁によって行われた「訪日教育旅行の受入体制に関する実態調査」(2016年)によると、全国47都道府県のうち43か所で学校交流のためのマッチング業務を行っており、41か所では都道府県の観光部局や、観光協会などに訪日教育旅行を担当する部署が存在しています。担当部署はJNTOもしくは、海外の学校や旅行会社からの直接の訪問依頼を受け、教育委員会や各学校へ受け入れ依頼を行っています。

また、訪日教育旅行の受け入れにおいては各自治体の取り組みが非常に重要となります。特に長野県では訪日教育旅行受け入れの整備が進んでおり、訪日教育旅行受け入れマニュアルの制作や農家と連携したホームステイ受け入れなどの取り組みが行われています。

受け入れ成功のポイント

 

訪日教育の円滑な受け入れのために必要な5つのポイントをご紹介します。

1関係機関との連携

訪日教育旅行は自治体の観光部局と教育部局にまたがる事業であり、スムーズな受け入れのためには各機関の連携が重要になります。連携の中心として一元的な相談窓口となる訪日教育旅行担当部署の整備を行い、観光部局・教育部局・教育委員会・学校・JNTOなどとの円滑な協力体制による地域が一体となった受け入れが必要です。

2受入校の負担軽減

学校交流は受入校の準備期間が短く、英語科など特定の教職員の負担が大きくなりやすいという懸念があります。学校側の負担が大きい受け入れは、次に繋がらない1回限りのイベントとして終わってしまう恐れが高くなります。教育課程と整合性のとれる現実的な交流プログラムの提案や、スケジュールや事前準備などの調整、通訳の派遣、学校交流に係る費用への補助金交付など自治体側の積極的な支援が求められます。各自治体の訪日教育旅行担当部署が受入校と訪問校の間に立つことで、双方の負担を軽減し満足度の高い学校交流を実施できるような配慮が必要です。

3受入校と訪問校の目的に合った交流の実施

訪日教育旅行では訪問側の海外の学校と受入側の日本の学校の双方に目的をもっています。訪問校は高い教育的効果を求め、例えばスーパーグローバルハイスクールのようなレベルの高い学校との交流を求める場合もあれば、学校交流を行うもののあくまで観光中心という場合もあります。他方で、受入校も児童・生徒の様々な教育上の課題に対応する教育課程の一環として、受け入れを検討しています。このような双方の訪問・受入れの意義に関し相互に理解を深めたうえで、学校交流を行うことで満足度の高い交流の実施が可能となります。

4予算の確保

日教育旅行受け入れに係る各自治体での予算確保も重要なポイントです。一元的な受け入れ窓口となる訪日教育担当部署の運営や、通訳などの人材確保、受け入れを行う学校への経費補助のためには、経年での予算確保が望ましいです。当該地域内での宿泊日数など一定の条件を満たした場合に宿泊費用に対して助成金を交付する制度を、海外からの教育旅行にも適用できるよう整備することも、観光振興の促進に効果的であると考えられます。また、受入校の負担軽減を目的として、学校交流における記念品代や昼食代、教材費などに対する補助も有効です。場合によっては訪問校へ費用の一部負担を促すなどの工夫も考えられます。

5ホームステイへの対応

訪日教育旅行では海外の学校から「日本人と交流を行い日本の文化や生活を知りたい」との要望があることが多く、学校交流以外にも一般の家庭に宿泊するホームステイや、宿泊せずに食事をとるなどの数時間の交流を行うホームビジットのプログラムが好まれます。近年では農家や漁家に宿泊し、日本の農業や漁業を学ぶ農泊も人気を集めています。地域全体で安全管理を含めたホームステイ受け入れ態勢を整えられるかどうかも、訪日教育旅行における大きなポイントになります。

受け入れに対する課題と解決のヒント

JNTO訪日教育担当者より受け入れにおける課題解決のためのヒントをお教えします。

訪日教育旅行
受け入れ担当者
受け入れを希望している学校が少なく、マッチングが困難です。
JNTO担当者
学校にとって学校交流の受け入れが身近なものでない場合が多いため、学校交流の教育的メリットの訴求や、交流事例や受け入れノウハウなどの適切な情報提供が求められます。域内の学校に訪日教育旅行受け入れに対する意欲についてアンケート調査を行い、受け入れに意欲的な学校を選定している都道府県もあります。2004年の調査によると、訪日教育旅行の受け入れを行わなかった全国の中学校・高等学校のうち、約89%は受け入れを行わなかった理由を「依頼がなかったため」と回答しており、受け入れに対する積極的なアクションがなくとも受け入れ自体は好意的にとらえられている可能性が高いと考えられます。
訪日教育旅行
受け入れ担当者
キャンセルが発生しないか不安があります。
JNTO担当者
学校交流には訪問校の都合による直前でのキャンセルのおそれがあることは事実です。訪問の申請を受け付ける際には航空券と宿泊先の予約が完了していることを必須条件とすることでリスクを軽減することが可能です。また海外の学校や旅行会社の担当者にキャンセル不可であることや、スケジュールの変更などの問題が発生した際にはすぐに連絡をとるようしっかりと伝えてください。
訪日教育旅行
受け入れ担当者
訪問校の申請がぎりぎりで、マッチングやスケジュール調整が難しいです。
JNTO担当者
素早く的確なマッチングを行うためには、学校交流に関する希望や条件を確認するヒアリングシートの活用が効果的です。海外の学校には訪問申請を行う際に回答してもらい、あらかじめ収集した日本の学校からの回答と照らし合わせてマッチングを行います。受入校と訪問校双方のニーズや目的のマッチングにも有効です。スケジュール調整に関しては、訪問校に対して日本の教育システムや学校スケジュールへの理解を求めていくことも重要です。
訪日教育旅行
受け入れ担当者
交流をサポートする通訳は必要ですか?
JNTO担当者
英語科教員の負担軽減のためには、通訳を自治体側で確保することが求められます。自治体にて雇用している通訳だけでなく、地域ボランティア、地域の大学生・留学生などに参加を促している事例もあります。

受け入れまでの流れ

訪日教育旅行の受け入れはJNTOが国内の一元的な窓口となって海外の学校や旅行会社からの訪問申請を受け付け、訪問校の希望に合わせて各自治体の教育旅行担当部署に受け入れを依頼しています。その後、自治体の担当部署が各機関と連携して受入校の選定を行い、各学校へ受け入れ依頼を行います。学校同士のマッチングが成立した後は、訪問側の担当者と自治体の担当者の間でプログラムの調整を行い、学校交流が実施されます。

訪日教育旅行全般に関するお問い合わせはJNTO訪日教育旅行受入促進窓口へお問い合わせください。また受け入れを希望する学校は、まずは各都道府県の観光部局もしくは訪日教育旅行担当部署にお問い合わせください。