訪日教育旅行と学校交流とは?

「訪日教育旅行」とは、海外の学校に通う児童・生徒が、教職員などの引率のもと学校教育の一環として日本を訪れる団体旅行です。安全性が高く教育素材も豊富な日本は、教育旅行の訪問地として人気で、世界中から多くの青少年が「語学習得」「国際交流」「異文化学習」など独自の学習テーマを持って日本を訪れています。


訪日教育旅行では「観光」や「語学学習」だけでなく、”日本人との交流を通じた国際交流” や ”異文化理解” が目的として設定されていることが多く、日本の学校への訪問やホームステイなどのプログラムが好まれます。近年、日本全国の自治体や学校で訪日教育旅行の受け入れ件数が増加し、多くの小学校・中学校・高等学校で全世界から訪れる同年代の児童・生徒との交流が行われています。

訪日教育旅行受け入れの6つのメリット

訪日教育旅行と付随する学校交流の受け入れは、教育旅行全体に対する支援を行う各自治体と交流を行う学校が連携を図りながら実施されます。海外の学校との学校交流の受け入れは、児童・生徒と学校にとっては「教育的メリット」を、地域にとっては地域の魅力を通じての「経済的メリット」をそれぞれもたらします。

people児童・生徒への効果

異文化で暮らす同世代との交流は、児童・生徒の成長に大きな教育的効果をもたらします。

1国際理解教育の促進

海外の同年代の児童・生徒とともに考え学ぶ機会は、子どもたちから海外への興味を引き出すと同時に、国際社会に対する理解も増進させます。グローバル社会で活躍する人材を育てるためには、自国と他国の社会を相対的に見ることのできる多面的な視点や、異なる歴史背景を持つ人々へとの協調性を育む国際理解教育が必要不可欠です。子どもたちは学校交流を通じて、新しい価値観に遭遇し国際社会への理解を深めることになります。

2実践的な英語学習

学校交流における児童・生徒間のコミュニケーションは、英語を公用語としない国との交流の場合も、一般的に「英語」で行われます。交流が行われる当日はもちろん事前・事後学習においても、子どもたちにとっては自らの学習成果を試し、自己効力感を強める絶好の機会となります。外国語を用いてコミュニケートする楽しさを知り、「何のために学ぶのか」という外国語学習の意義と紐づけることで、学習モチベーションの向上が期待できます。また、目的や場面、状況などに応じて外国語でコミュニケーションを図る力が必要となる学校交流の場は、外国語教育の指針となる「聞くこと」「読むこと」「話すこと」「書くこと」の力を総合的に育成することができます。

3主体的・対話的で深い学びの実現

学校交流では英語科の学習にとどまらない、教科横断的な活動学習の場を子どもたちに提供できます。共に授業を受け共通の議題について話し合う経験や同じ目標へ向かって協力する活動は、プレゼンテーション能力やディスカッション能力、創造的・批判的思考力の質を高めることができます。学校教育での学びを人生や社会に活かす「生きる力」を確実に育むための、「主体的・対話的で深い学び (アクティブ・ラーニング)」の場として、学校交流は最適な機会であると言えます。 

location_city学校への効果

さまざまな国の学校との国際交流は、地域社会との連携強化と国際交流教育の環境整備につながります。

4地域社会との連携強化

訪日教育旅行の受け入れは学校や自治体を含め地域社会全体の協力が必要な活動であり、地域に根差した学校づくりを行ううえで欠かせない地域学校協働活動であると言えます。訪日教育旅行と学校交流の受け入れは、地域の将来を支える国際人材の育成と観光・教育を通じた地域振興という、学校と地域の双方にとっての大きな目標の達成を目指すことができます。地域社会全体で目標を共有し、未来を担う子供たちの成長を支え、地域を創生していくために、訪日教育旅行の受け入れは今後ますます重要視されるでしょう。

5継続的な国際交流の足がかりに

訪日教育旅行に伴う学校交流の受け入れを一過性のイベントではなく、プログラムとしてカリキュラムや学校行事へ取り込むことで、継続的な国際交流への足がかりとすることができます。相手国を訪問するホームステイプログラムや交換留学の実施、ビデオ通話や文通による交流など、国際間での協働学習には様々な可能性があります。学校交流をきっかけに訪問校と教育協定や姉妹校関係を締結し、相互に教育交流を深める試みに取り組んでいる学校もあります。児童・生徒同士の交流だけでなく、教員同士の交流による教育メソッドの共有は、学校全体の教育レベルの向上にも貢献します。

public地域への効果

訪日教育旅行の受け入れは「観光」を通じた地域振興と、未来の発展に寄与します。

6将来の観光リピーター獲得による地域振興への期待

団体旅行である教育旅行は、まとまった数の旅行者を効率的に地域へ呼び込むことができ、滞在・宿泊を通じ、地域振興に大きく貢献します。域内での宿泊施設や観光関連施設などへの訪問者を増加させることで、地域での訪日外国人旅行者受け入れの機運を醸成させ、受入環境整備の促進も図れます。さらに、今後の観光需要を担う若年層とのタッチポイント増加は、帰国してからの家族・友人への波及効果も期待できます。学校交流や観光を通じ、地域の魅力を訴求することで、将来のリピーター層の獲得へと繋げる効果も期待できます。

海外からの訪日教育旅行受け入れ実績

日本各地で訪日教育旅行の受け入れが行われており、2017年度には延べ1,800校を超える高等学校等で交流が行われました。日本はアジアを中心に教育旅行の訪問先として人気を集め、2017年度の訪日教育旅行生は40,000名に迫りました。

受け入れ実施学校数の推移

国・地域別訪問者数の推移

国・地域別訪問者数の推移


出典:文部科学省「平成27年度高等学校等における国際交流等の状況について」